「こら〜!慶次、待ちなさい」
「慶次ー、その子は置いてけ〜」
「ーーーー」
「前田慶次、を放せーー」
「待てーーー」
の眼前には、前田利家、まつ、そして三好三人衆が必死の形相で追ってきているのが見える。
だが、後ろ向きに進んでいるため、前が見えない不安と、追ってきている人達の顔が恐ろしいのと、飛ぶような速度にひしとはそれにつかまっている。
それ=前田慶次の頭(正確には首)
「なーんか、こういうの、愛の逃避行って感じで楽しーなぁ!」
(楽しくない!全然楽しくない!!)
にこにこと笑顔でとんでもないことを言いながら駆ける前田慶次には心の中で盛大に突っ込みを入れる。
口を開くとうっかりすると舌を噛みそうな感じで、は叫ぼうにも叫べない。
「キキ」
夢吉がの髪を緩く引っ張っての顔を覗き込む。
心配してくれているようで、は力なく微笑んだ。
(心配するくらいなら君の主の足を止めてくれ)
前田の足がどれだけ速いのか、暫くすると追いかけてきた五人が見えなくなった。
「もう、大丈夫かな…?」
前田は、ゆっくりと速度を落として止まって、を降ろした。
「ぁーごめんな?つい、勢いで連れまわしちまって」
「はぁ、まぁいいですけど…」
(実際良くはないけど)
ぱんぱんと袖を叩きながらは言う。
「あんたの連れって三人いるんだな…ひょっとしていいとこのお姫さんかい?」
口調は茶化しているのに顔は真面目、大和、三人、というところで心当たりができたのだろう。
「まさか、違いますよ。ただあの三人は私の保護者なので…貴方と同じ」
「うーん、確かにそう言われりゃそうか。いや、俺の勘違いだった、すまねぇ」
「お気になさらず」
と、が言い切るかくらいで前田の両耳が二人の手で引っ張られた。
「こら慶次!女の子をこんなところまで連れてきて!」
「人に迷惑かけちゃダメだぞ、慶次」
「イデッイデデデェ」
「前田殿、教育がなってないのではないか」
「全くだ」
「、大丈夫だったか」
三人衆が前田家からを庇うように立つ。
「大丈夫だから」
三人衆が武器を抜きたがっているのがわかって、は慌てて三人衆を止める。
「すまぬ、三好殿」
「まこと申し訳ござりませぬ」
前田夫婦が前田慶次の頭を押さえて頭を下げる。
「ぇ、三好ってやっぱ、三好三人しゅ…ぅぐっ」
前田慶次が何か言うがまつが、更に前田の頭を押さえた。
「に大事ないようだから此度はそれで構わぬ」
「二度とこのようなことがないようにしてもらいたい」
兄と弟が、厳しく前田夫婦に注意をして事は終わりということになった。
「どうか本日は前田の家にお寄りくださいませ」
「うむ、是非ともお詫びをさせていただきたい」
「そいつぁいい、そうしなよ!…イデッ」
前田利家とまつが無言で前田慶次の頭を殴る。
「どうする、」
「私が決めるの?」
「これはお前の旅、だろ」
「俺達は別にどちらでも構わん」
は、ちらと前田家のほうを見るとにこにことした笑顔に当たる。
「もし、ご迷惑じゃなければ…」
「まあ!迷惑などございませぬ、こちらの非にございますれば」
「ぃよぉし!今日は宴会だーーー」
「やりぃ!…イダッ」
前田利家が吼えると、慶次も腕を上げて喜ぶ、が、間髪入れずにまつに拳骨を貰う。
くすっ
誰ともなく笑い出して、八人は前田の家に向かった。
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