三好三人衆連絡帳
〇月×日 晴天 執筆者:兄(長)
この度、松永様がご乱心のため我々三好三人衆はこの事実を詳細に記載し、後に役立てるためにこれを記す。
今朝は、何事もなかった。
も元気に城下に遊びに出かけ、松永様、我々三好三人衆は政務に勤しんでいた。
松永様と我々は別室だったためその変化の逐一を見たわけではないが、松永様に呼ばれて部屋に行った時のことを思い出す。
「松永様、三好にございます」
「三好、卿は犬は好きか?」
部屋に入った途端、松永様が犬を抱えていらした。
アレは俺でも見たことがない。
笑顔、純粋な混じりけのない笑顔。
俺はとりあえず「はぁ、嫌いではないですが」と答えてその場を辞した。
その後、松永様が仕事内容について全く持って以前と逆というか、少し違う方向に持っていくようになった。
減税、備蓄品の整理に売買、農民への手当て…
どうなっているのだろう?
〇月×日 曇 執筆者:弟(政)
今日も松永様は治っていなかった。
松永様に見ていただくものを見ていただいてそのほかの雑務をこなす。
いつ元に戻るかもわからず、そして今の松永様の命に背くわけにもいかず、疲れと疲労と疲れと疲労ばかりが募っていく。
昨日松永様が拾っていらした犬の貰い手が現れて一つの仕事は終わった。
が残念そうにしていたがうちにはそんな余裕はない。
それから独眼竜と竜の右目がやってきた。
昨日松永様が文をお出しになっているので止めたが一つだけ届いていたようだ。
何にせよ、余計なことばかりが増えていく。
だが、松永様がこの通りであれば我々三好三人衆以外の誰が松永軍を守るというのだ?
〇月×日 晴れ 執筆者:弟(友)
今日は猿飛が偵察に来た。
松永様に優しいお言葉をかけてもらい、兄が泣いていたところに来た。
一日一日が過ぎるのが長く、また一日が始まるという朝には気分が沈む。
猿飛には一応忠告しておいたが、あの松永様の状態では敵に攻め入られたとしても会話で和平をとか言い出しそうだ。
ところで、兄、俺は思うのだが、最近涙もろいぞ。
死神部隊が形無しな上にその長髪が鬱陶しいから抜けてもらえないか。
検討しておいてくれ。
〇月×日 曇時々弟 執筆者:兄(長)
検討も何もいつも俺に八つ当たりをするのをお前こそやめろ。
それから長髪は鬱陶しくはない。
ちゃーむぽいんと(独眼竜に教えてもらった)だ。
大体お前等面をつけていつもの格好をすると見分けがつかん。
どちらか髪を伸ばせ。
ということで、今日は織田軍が来た。
松永様があのようになられている今に来ずともよいものを。
途中で明智と森がいないことに気づき、探した。
よもやと思い、の部屋に行けばそこにいた。
全く油断のならない連中だ。
織田軍にはは松永様の遠縁ということにしておいた。
ああ、これはもちろん俺が提案して松永様が以前了承してあった。
が明智を見て固まっていた。
明智には注意するように。
〇月×日 晴れ時々兄 執筆者:弟(政)
いつの間にこんな面白いことになっていたんだ?
俺も兄に言いたいことがあるぞ。
俺の嫌いな野菜を献立に入れるのをやめろ。
俺はあの存在の意義がわからない。
それから髪は絶対に伸ばさないからな。
今日は、前田の風来坊が来た。
松永様と一緒に仕事をしていたところに来た。
これ以上の減税、善政政策は無理だと思うのだが、無理を押し切るところは以前の松永様と同様だ。
勘弁して欲しい。
前田夫婦から滋養強壮にいい薬を貰った。
本当にありがたい。
〇月×日 兄 執筆者:弟(友)
俺が兄に八つ当たり?
嘘を言うのも大概にしてくれよ、兄。
大体明智を逃したのは兄の責任だろう、それこそ八つ当たりだ。
俺も今のところ髪を伸ばす予定はない。
今日も松永様はお優しかった。
変な宗教の売り込みが来て、無視すればいいのに行ってしまった。
を行かせたが、松永様はがらくたを大量に購入していた。
やれ、アレを捌くのは面倒だぞ。
うまくいけばすぐに処理ができるかもしれないが。
とりあえずああいうお金が絡むあたりはちょっと今の松永様には任せたくない。
〇月×日 弟 執筆者:兄(長)
昨日松永様が購入したがらくたをまとめて毛利に売りつけた。
遠方まで行ってすぐに引き返したせいか、倒れてしまった。
日頃の疲れもあるだろう。
馬鹿は風邪を引かないと思っていたがお前達も風邪を引いたな、なんでだろうな?
一人に任せたが、心配で心配で薬が喉を通らなかった。
と言って飲むのを免れようとしたが婆が許してくれなかった。
暫く寝込んでいるとの悲鳴が聞こえた。
…どうやら元に戻ったらしい。
よかった、帳簿やら何やら証拠隠滅作業を昨日のうちにしておいて。
起きたらを探しに行かねば。
〇月×日 兄 執筆者:弟(政・友)
馬鹿な兄が風邪をひいたことに驚愕していた。(友)
兄のくせに、俺達を馬鹿とか言うな馬鹿。(政)
馬鹿というほうが馬鹿だ。(友)
松永様が元通りになって一安心ではある。(政)
そうだな、以前どおりの松永軍だ。(友)
この連絡帳は見つからないところにしまって置こう。(政)
兄の手が届かないところがいいだろう。(友)
兄ちっせぇからな。(政)
げ、松永さ…
「ほう、面白いものを書いているな三好」
最後の仕上げとばかりに連絡帳に記していた弟達二人の背後に松永がいつの間にかいたようだ。
「い、いやっこれは…」
「そ、そのぉ、…」
まさか!
いつから!?
などと弟達の頭には浮かびながらもじりじりと連絡帳を持って後ずさる。
「ん?お前等どうし…ま、松永様!?如何されましたか?」
兄がちょうどその場に出てきてメラメラと怒りに燃える松永を見て驚愕の声を上げる。
「馬鹿共がぁぁぁぁぁ」
「「「ぎゃーーーー!!!」」」
そして三人衆、連絡帳諸共松永の固有技で吹き飛ばされて燃やされた。
暫く、プスプスいいながら煙を出している黒コゲの三人衆が目撃されたとか。