暗い闇の中、ぱっとスポットライトが舞台の上の人物を浮かび上がらせる。

大きな体、纏うは南蛮の黒衣、両手にはメガフォン。

「ハァイ!みんなが大好きザビーだよぅ!!」

そして両手のメガフォンを使わずに大声で叫ぶ。

「今日ハー何の日かミナサン知ってまーすカー?」

肩手を耳に当てて声を聞くような振りをする。

「ムッフフ、そうです、今日はハーロウィィィン!トリックオアトリートでお菓子くれないトォ」

そこでザビーは一旦区切り観客を見回す。

「イタズラですヨ」

これガ世の真理デス

口端がこれでもかとつり上がり、目も弓なりになって言い放った。

「ソレデハ!ショーの始まりデース!!」

ブーーー


むかし、むかし、あるところに赤頭巾を被った女の子がおりました。

、今日は赤頭巾を被ってお婆さんにこの饅頭とお茶を届けてきてくれないか?」

「はい、お母さん」

は、お母さんである三好兄の実の子ではありませんでしたが、まるで本当の親子のように仲睦まじく暮らしておりました。

三好兄はに赤頭巾を被せてやりながら注意をします。

「いいか、お婆さんの家までは森を抜けて一直線、道なりだ。決して寄り道などしてはいけないぞ」

「わかってるよ」

きゅっとの顎の下で綺麗に蝶々結びをしてからを玄関から送り出しました。

「狼には気をつけろよ」

「はーい、いってきまーす」

は元気に、森への道を歩いていきました。

森を歩いていると、正面から二人の狼が歩いてきました。

「赤頭巾赤頭巾」

「赤頭巾の

「はい狼さんこんにちは」

は、三好兄に注意を促されていたので挨拶だけしてさっさと素通りしようとしました。

「なぁ、今日はどこに行くんだ?」

「もしもお婆さんのお見舞いに行くのなら、そこの花畑で花を摘んでいくと喜ぶだろう」

けれども狼達、三好弟達は、に話しかけ続けました。

そして、三好弟の言った花畑には素晴らしく綺麗な花が咲き乱れていました。

(ちょっとくらい、花を摘んでいったって大丈夫よね)

「その通り、お婆さんのお見舞いに行くの。けれど、花を摘んでいくというのは思いつかなかったわ、ありがとう」

「どういたしまして」

「綺麗な花を選んで摘んでおいで」

はそうして三好弟達と別れて花を摘み始めました。

「よしよし、うまくいったな兄弟」

「そうだな兄弟。この間にお婆さんを…」

「「喰ってしまおう」」

楽しそうに花を摘んでいるの後姿を見て、三好弟達は急いでお婆さんの家まで駆けていきました。

は花を摘むのに一生懸命になって時間が経つのを忘れてしまいました。

「ああ、いけない…!もうこんな時間、早くお婆さんのところに行かないとっ」

は籠に花を詰め込むとお婆さんの家に向かって走り出しました。

そして、バンッと大きな音を立ててお婆さんの家に駆け込みました。

「お婆さん!お見舞いに来ましたっ

、扉はそのように開けるものではないよ。やり直しなさい」

「え、、はい…」

当然のように布団に入って本を読んでいたお婆さん、もとい、松永、は、駆け込んだを一瞥して言いました。

(あれ?お婆さんって狼に食べられたんじゃ…あれ?)

可笑しいなと思ったは、玄関に蹲る二つの黒い塊を見つけました。

「うぅ…兄のやつ松永様がお婆さん役だって言わなかった」

「猟師来てくれないかな、早く」

どうやら松永がお婆さんだと知らされていなかった弟達は、松永に仕置きされたようでした。

コホン…お婆さん、赤頭巾がお見舞いに来ました」

「よく来たね、入りなさい」

「お邪魔しますー」

今度はコンコンとノックして部屋に入りました。

「お婆さん、お加減はどうですか?」

「卿が見舞いに来てくれたから大分良くはなったよ」

「それはよかったです。これ、お母さんからお見舞いのお饅頭とお茶です」

籠を見せて横に置いて、その時に籠から花を取り出しては松永に渡しました。

「そうか、ご苦労だったね」

「いいえ、お婆さんが元気そうで何よりです」

(…え、っと台詞、アレどうするの?)

がどうしたらいいのかと迷っておりますと、松永がに聞きました。

「何故、私の耳が大きいのか聞かないのかね?」

(…うん、大きいっていうか、それ、狼の耳ですよね。弟から奪ったのですか…)

「えぇと、どうしてお婆さんの耳はそんなに大きいのですか?」

「それは卿の声をよく聞くためだよ」

「どうしてお婆さんの、目はそんなに大きいのですか?」

は、次々と質問を投げかけました。

「それは卿をよく見るためだよ、こっちに寄ってよく見せておくれ」

(…あれ?そんな台詞なかったような…)

は仕方なく、松永の傍に寄りました。

「え、とお婆さんの口はどうしてそんなに大きいのですか?」

松永は微笑んでの手を引き、布団の中に引き込みました。

「あわっ」

「それはね…卿に子守唄を聞かせるためだよ」

「…はあ」

「おやすみ

「えぇと…おやすみ、なさい」

は松永の子守唄を聞きながら眠りについてしまいました。

それから暫く経って、

コンコン

「…卿か。ご苦労だな、そこに狼二匹置いてあるだろう、持っていってくれ」

入ってきたのは、猟師の風魔でした。

風魔はぐっすりと眠ると松永を見ると、小首を傾げました。

「猟師は狼を狩っていくのが仕事だろう。物語の多少の変更は瑣末にすぎないよ」

風魔は、じぃとを見つめると、こくんと頷いて二匹の狼を引き摺って去っていきました。


「めでたしめでたし」



ブーーー


「Trick or treat.Trick or treat.Trick or treat.…」

「ギャー松永サンやめてーワタシが悪かったデスー!あ、あ、ソレはゴカンベンをー!!

松永がザビーを簀巻きにして足で蹴りながらザビーの財布やら鞄やらから金品を巻き上げる。

「しっかし、熟睡だな

「起きないぞ。頬を突いても」

「寝かしておいてやれ、面倒事の後だ」

兄がの肩に布団をかけ直す。

「あのー、で、俺様の日当は…」

台本を持って、困ったように猿飛がまったりしてたり、殺伐している面々に向かって声をかける。

しかし、誰も何も返事をしない。

「Trick or treat.卿には愉しませてもらったよ」

「もうホントに、カンベンデスー」

「くわぁー寝るか、俺達も」

「賛成」

「こら、の布団に入るなお前ら、って風魔も入るな」

完全に無視だ。

勝手に呼びつけてナレーターをやらせたにも関わらず。

「…とりっくおあとりーと…俺様だって」

顔を下に向けてくるりと彼らに背を向けた猿飛。

その後の彼の消息は知れない。