ゆっさゆっさ
体が揺れる、まどろみの中からは起こされた。
始めに目に入ったのは黒と白と黄色のストライプ。
そして黒い長い髪。
その揺れに身を任せつつ、ゆっくりと脳を起こす。
手に触れる感覚、冷たい鉄と暖かな布。
「ぉ、気がついたか」
「…三好弟」
あんまり目覚めの心臓によろしくないお面が視界いっぱいに広がった。
と、すぐにもう一人の弟に蹴りを入れられ、お面が離れていく。
「った」
「大人しくしていろよ。もうすぐだからな」
腹のすぐ傍から声が響いて、やっぱり三好兄に担がれているのだと認識する。
しかも、大人しくしていろと釘を刺された手前暴れるのも文句を言うのも憚られた。
「じゃーどこに向ってるんでしょうか?」
「聞いてなかったか。松永様に」
「人取橋だ」
聞いて思い出す。
昨夜の夕餉
「明日、卿は留守番と同行どちらが好みかね?」
松永が行き成りに問うた。
「へ」
あまりにも突然では聞き返した。
が、まぁどこか出かける誘いだろうと思った。
「同行が許されるのでしたら是非行きたいです!」
いい加減、城の中うろうろしたり死ぬ気の鬼ごっこにも飽きてきたところだった。
「では、明日を楽しみにしているといい」
至極愉快そうに松永が笑った。
その時は何もわからず、機嫌いいなと思っていただけだった。
「な、なんてこったー!」
「おい、暴れるな」
「落ちるぞ」
不安定な三好兄の上だと気づき、はピタリと動きを止めた。
「そうそう、大人しくな」
ぽむぽむと腰あたりを軽く叩かれた。
「でも、だからって何で寝てる間に拉致…」
「起きなかったんだ」
「布団引きはがしてもな」
「魘されてたぞ」
「うなされ…ああ…先日の茶の…ああああああああああ」
思わず塞ぎ切らない傷が思いっきり開いた。
その時のことを夢に見ていて夢の内容をまた思い出し、思わずは両手で頭を抱え込んだ。
「のわっ」
三好兄が突然を抱えなおした。
そして弟が厚い布をにかけた。
「氷穴に入るからな」
「そういえば、久秀様は?」
「あの方は先に行っている」
「そっか」
爆薬とか人質とか仕掛けているのだろう。
人が、死ぬんだ。
伊達軍の人も松永軍の人も。
「怖いな」
そんなところに来てしまった。
「大丈夫だ」
「ああ」
「楽しめばいい、貴重なところに来れたと」
それに
「俺達もそれなりに、やる」
「松永軍の死神部隊、そう呼ばれているしな」
「心配するな」
楽しめよ、そう言われて降ろされる。
「見てみろ、綺麗だろう」
氷穴の中、氷がまるで彫刻のようだ。
扉はまだ開け放してあるから朝日が射し込み、キラキラと反射している。
「わぁ」
嵐の前の静けさの中、は素直にその景色に見蕩れていた。
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