は、全身が引き攣るような感覚を覚え、目を覚ました。

手足や首を動かしながら目を暗闇に慣れさせる。

何のことはない、全身筋肉痛になっただけだ。

目が覚めたは起き上がり、襖から廊下を見てみた。

その動作の途中で何度も痛さで悲鳴を上げそうになった。

真っ暗な日本家屋、の、廊下。

如何にも何かが出そうである。

そぅっと襖を閉じたは背後に人の気配を感じ振り向いた。

「ぅっぎゃむがぶ

そこには、ぼぅっと浮かび上がる風魔がいた。

あまりのことにの心臓はびくと跳ね、口から悲鳴が飛び出た。

風魔がとっさにの口を塞がなければその悲鳴が宿中に響いていたことだろう。

がやや涙目になりながら風魔を見ると、風魔は口に指をあて、静かにと合図した。

コクコクとが頷くと、そっと風魔の手は離れていった。

「…おかえりなさい、風魔さん」

が小声で話すと、風魔はそれに頷いた。

「怪我とかしなかったですか?」

こく、と風魔は頷く。

「よかった。…その、それで、片倉様や伊達政宗公は…って私が聞いてはいけないですよね」

が自己完結して困らせてしまっただろうかと風魔を見ると、風魔は首を傾げていた。

そして頭を左右に緩く振るとまた、首を傾げた。

「?わからないってことですか?」

今度は風魔は頷いた。

「では、奥州に引き上げたようですね?」

慎重に言葉を選び問う。

風魔は二度三度頷いた。

「追っては、来なさそうですね…なんだか申し訳ないなぁ」

複雑だ。

追って来られたら来られたで怖い。

だが、現状のままではただの盗人だ。

だからと言ってあの松永が六爪を返すとは思えない。

が松永軍に進言することは、できない。

それは我が身の可愛さでもあるし、食べさせてもらっている、恩も少なからずある。

考えれば考えるほど自分が嫌いになりそうで云々言い出したの頭に風魔が手を乗せた。

が顔を上げると、風魔は布団を指差した。

「?…あぁ、そうですね。とりあえず寝たほうが明日のため、ですね」

風魔にはいつも気を抜かして貰ってると思いながら苦笑いして風魔に答える。

風魔はそれに一つ頷くと、音もなく消えた。

「わ」

はそれに驚き、声を上げそうになった。

今度は自分の両手で口を押さえ、誰もいないのにあたりを見回した。

しんとした暗い闇だけがそこに存在していた。

は深い深い溜息を一つ吐くと、大人しく布団の中に入った。

布団の中に入った途端、緊張が解け、暫く全身の痛みと闘うこととなった。

が、ほんの少しすると、すっかり夢の世界へと旅立って行った。



風魔はその様子を天井裏から見守ると、身を翻してとある部屋の前に降り立った。

風魔が降り立つとほぼ同時に襖が開き、松永が出てきた。

「卿か…」

風魔は松永を確認すると懐から巻物を取り出し、渡した。

「ご苦労」

その言葉が終えるか終えないかの瞬間に風魔は消えた。

松永は部屋に戻り、灯をつけ、巻物を解いた。

ざっと目を通すと、灯を見つめていた。

そして徐に吹き消した。

宿は、朝一番の光が届くまで闇に包まれたのだった。