「ただ試合するのもつまらないな」
「兄が負けたらなんか罰つけたらどうだ、?」
弟達が好き勝手言う。
「そうだな、には負けないだろう」
兄のその一言にはカチンときた。
「じゃー私が勝ったら兄、次の戦その髪を三つ編みお下げにして出てね」
「そ、それは…」
「いいな、それ」
「頑張れよ、。絶対勝て」
兄の言葉に被せるように弟達が言う。
「うん、頑張る!」
は目一杯の笑顔で弟達に答えた。
「おい…」
兄はなんだかとても切ない気持ちになった。
試合が始まると二人とも真剣に臨んだ。
「アチョーー!」
「ホワタァー!」
その様子を弟二人は長椅子に腰掛け見ていた。
「あの掛け声はいるのか」
「ノリノリだな、二人とも」
足を投げ出し、すっかり寛いだ様子だ。
「まぁ、アレだ。もしが勝ったら」
「次は三人衆じゃなくて二人衆だな」
「恥ずかしいしな」
「ああ、実にな」
「お前等なぁーー!」
会話が耳に入った兄が思わず打球を二人に向けた。
「おいおい」
「頑張れ、」
二人はあっさりと打球を避け、球をキャッチするとに投げ渡した。
「おーともさ」
もパシリと見事に受け取った。
その時、休憩所の襖が開いた。
「卿らは一体何をしているのだね」
松永が丁度通りがかったようだ。
松永の姿を目に留めると、は衝撃で球を落としてしまった。
いつもの髷をおろし、桶を持つ松永、その桶の中にはアヒルがいた。
「卓球です、松永様」
弟達は姿勢を正し、松永にラケットを見せた。
「なるほど…それで?三好と、どちらが勝っているのかね」
「残念ながら、同点です」
三好兄が答え、十秒ほど放心状態だったは球を拾って頷いた。
「三好、代わりたまえ」
「ぇ、あ、しかし…」
兄が渋るが、松永は言葉を重ねた。
「代われ」
「…わかりました」
兄は渋々といった風を隠すことなく、引き下がった。
松永は桶を兄に渡しラケットを受け取ると台についた。
「さあ、卿が打つのだろう?」
「へ、あ、はい…じゃいきますね」
そして何度かラリーを続けるが、は思った。
(これは…実はチャンス?久秀様に一矢報いたいなぁ)
すると、丁度緩い浮き上がった打球、チャンスボールがきた。
「いけっ」
「そこだっ」
「やれっ」
三人衆の応援を貰い、はその球を思いっきり、打ち込んだ。
「っしゃーーー!」
見事決まり、思わずガッツポーズをしただったが。
相手が松永と思い出し、おそるおそる後ろを振り返った。
「あのー…久秀様、この試合は私の勝ちでよろしいでしょうか?」
丁度五セット目のマッチポイントだった。
「ああ、だが」
は既視感を感じた。
松永の目がキラリと光った。
「次はこうはいかないぞ」
「ぇ、まだや「はっはっは」るんですね、ハイ」
は、三人衆に助けを求めんと視線を送るが、見事にそこは蛻の殻だった。
「ぅ、嘘だろーーーー!」
「一日は長い、ゆっくりと愉しもうではないかね」
が松永から開放されたのは、日が沈む頃だった。
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