道中は基本的には三好弟の馬と相乗りだった。
そう、基本的には。
「ぅ、あ、わ、ぁぁ」
「そこで右に引く」
「こ、こう?」
「もうちょっと強く」
は途中で何度も乗馬の練習をさせられた。
「こ、こー?っつぁったー」
強く引っ張りすぎて馬が暴れる。
「危ない」
「っと」
「ふー」
すぐさま三人衆が馬を止めに入る。
「ご、ごめんなさい」
馬が暴れたら馬の首に抱きつくようになったが馬上から言う。
「まぁ慣れだからな」
「そうだぞ」
「暴れる回数も減ってる。昨日よりは」
どうどうと馬を宥めつつ三人は同時にも宥める。
「調子はどうかね?」
松永がふらりと様子を見に来た。
「はい、なんとか歩けるようにはなりました。直線は」
「方向転換がまだ」
「ふむ、卿は馬が嫌いかね?」
松永は三好の言葉を聞いてに問う。
「いえ。嫌いというわけではないのですが…」
は、馬の首を見つめる。
嫌いではない。
ただ、生き物に乗るというのはとても難しいのだ。
松永が馬に近づき、その首を撫でる。
「…卿が馬の主人だと自覚を持たねば馬もどう動いてよいかわからぬよ」
「な、なるほど…」
松永の言葉にはすっかり感心した。
「が、まぁ卿にそこまで求めてはないがね」
次の一言では思いっきり心の中で滑った。
「…どっちなんですか!」
「さて」
実に楽しそうに松永は笑う。
と、そこに伝令の兵がやってきた。
「松永様、何者かがこちらに向かって来ている、と報告がありました」
「その言い方だと随分殺気立っているようだな。急ぎ布陣を布け」
「はっ」
伝令は速やかに身を翻し、駆けて行った。
「三好、卿らも行きたまえ」
「はっ。先に行っております」
三人衆もすでに支度を整えて、行ってしまった。
「ぇ、ぇとー私、は?」
三人衆もいなくなり、本来乗せてもらえるはずの弟が行ってしまったは降りようにも降りれず呟いた。
それを聞いた松永は、またの後ろに乗り込んだ。
「ぅわきゃっ」
は急いで手綱を握りなおし、体勢を整えた。
「さあ、成果を見せてくれ。何、真っ直ぐ進んで坂を上るだけだ」
「ぅ、そ、そんな…」
明らかに曲がりくねってますよね、道!
無情にも松永は馬の腹を蹴った。
「ちょっまっ」
「ははは、しっかり持たないと落馬するな」
がしと松永はの腰を持った。
その瞬間、は心の中で盛大に奇声と悲鳴を上げた。
(う、嘘でしょーちょ、無理無理無理)
「しっかり前を見ないと、ぶつかってしまうよ」
松永の至極愉しそうな声がすぐ横から聞こえる。
は決死の覚悟で陣中へと歩を進めて行った。
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