※ネタバレ要注意
暗闇の中で、は馬に寄り添い、様子を窺っていた。
しゃんしゃんと鈴の音が段々と向かって来ているのが聞こえた。
「ーーーどこだーー」
「返事しろーー」
「おーーい」
それと同時にを探している声も。
それになんだかとても安心しては泣きそうな気持ちになった。
「ここーーー」
声が涙声になっていないことをは祈った。
「いたいた」
「大丈夫か、」
「怪我してないか」
はコクコクと何度も何度も頷いた。
三人がの髪がぐしゃぐしゃになるまでの頭を撫でまわした。
四人は、馬を引いて陣に戻り、移動を始めている隊列に加わる。
はぐったりと三好兄に体を預け、馬に乗っていた。
また三すくみがあったのだが兄が勝ったのだ。
籠にするという話もあったが、は丁重に断った。
心底疲れてはいるが、歩けないほどでも馬に乗れないほどでもなかった。
やがて松永がその隊に加わり、隊は更に移動速度を速めた。
「随分と疲れているようだな」
を見て、意外だといわんばかりに松永は言った。
「誰のせいですか、誰の。またも風魔さんのお陰で助かりましたけどね!」
は強く言うが、様子はぐでっとしていた。
「…ああ、そうだ。風魔だが、もうすぐ契約が切れる。もう会うこともないだろうな」
当然とばかりに松永が言う。
「ぇ、どういう…」
「軍の経営上必要な瑣末だ」
暗闇が晴れ、松永が去った場所では風魔と片倉がまだ打ち合っていた。
ザッ
キンッ
「テメェ、覚悟は…いや、しなくてもいい。あの世行きの奴にゃ覚悟は無駄だぜ」
片倉が吼え、風魔に一撃を食らわした。
風魔は後ろに飛び、距離を取る。
暫し、睨み合うが、風魔から一気に殺気が消えた。
「なんだ…テメェ、なめてんのか?」
片倉が不審に問うが、風魔は何も言わない。
そして次の瞬間、風魔は消えていた。
「…くっくっくっくっ…くくく、ふざけた真似してくれる…」
片倉は、抑えきれない怒りを咆哮に変えた。
松永、テメェには地獄の扉の開き方を教えてやる!
「要するに金策が尽きたんだ」
兄がに説明する。
「風魔を雇うには金がいるからな」
「軍をある程度は維持させねばならない」
弟達も口々に言う。
「なるほど…でも、はい、さよならって」
「風魔にはすでに金は払ってある、時間分きっちりとな。もう過ぎたようだ」
もう、松永軍にいる理由が風魔にはない、の疲れ果てた頭でもそれはわかった。
そして、もう風魔に会うこともないのだということも。
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