※ネタバレ要注意
「また会ったな…ありがたくもない縁だ」
「言ったはずだ…この世の果てまでテメェを追うと」
松永は苦笑いを浮かべ、片倉は静かに、けれど怒りを込めて答える。
門を抉じ開け、先へ進むと、両側の壁から松永軍が片倉に襲い掛かってきた。
辺りに火薬と鉄、そして血の、肉の焼ける匂いが立ち込める。
ど、ん みしみし
は、振動を体に感じ、ハッと高い窓を見る。
すると夜なのに明るい空が見える。
戦が、始まっている。
今までは、恐怖を払拭させてくれる人達がいた。
けれど、今は剥き出しの心に直接恐怖が触れてくる。
は、ぎゅっと膝を抱えて縮こまった。
コンコン
どくんと心臓が跳ねる。
きぃと扉が少し開いて、皺くちゃの、人の良さそうなお婆さんが顔を覗かせた。
「…腹空かんけ?握り飯よばれるけ」
「…ぁ、はい。ありがとうございます」
扉の傍に寄り、受け取る。
「あのっ」
言って戸惑う、何を言うつもりだと。
「何け?」
「ぁ、の、外に、外に出たいんです」
けれど、思った以上に言葉は素直にの口から出てきた。
お婆さんは目を細め、じぃっとを見る。
「…外にでてどうするけ?戦が始まったばっかりで、危ないんよ」
その通りだ。
俯き、掌を握り締める。
それでもここにいるだけでは、この沈みそうな重苦しい心に押し潰されそうだから。
次の瞬間、血吐き、地に伏しても少しでもあの人達の近くにいたいと願うから。
素直に出てきた想いに確信を持って、今度は真っ直ぐお婆さんを見つめる。
「私は、行かなければならないんです。今度はきっと、自分の意思で」
口にすると現実味を帯びての中に入ってくる。
ストン
ずっと引っかかっていた、何かが取れた気がした。
お婆さんは、酷く戸惑い、けれどどこか嬉しそうに言う。
「そか、決めたんやね…出てき」
「ぁ、でも大丈夫、なんですか?」
は、お婆さんが松永に何か言われていたのではと思い言うけれど、お婆さんはきょとんとして、ああと言った。
「ここにお嬢さんを預かるゆうだけやから外に出したらあかんなんてもんはないよ」
「そうなんですか」
安心する。
玄関でしっかりと草履を履く。
「これ持ってき」
お婆さんがに御守を手渡した。
「気ぃつけてな」
「っ、ありがとうございます」
深く、深くは頭を下げ、屋敷を出る。
空が炎に彩られ、明るく照らす中、首に御守を通し、は歩き出した。
片倉は松永軍を倒しながら奥の松永に言う。
「人質と六(りゅう)の刀を返してもらおう…返事はいらねぇ…テメェの了解など無用だ」
「独眼竜は何故来ない?これも策略か?」
松永は逆に問う。
「テメェのような男を葬る…汚れ役は俺一人で十分だ」
片倉の言葉には抑えきれない怒りが滲む。
むわっ
辺りに薄紫色の香が広がった。
「傷が痛まないぞ!」
「これで俺達の勝ちだ!」
松永軍の士気が上がる。
「恐怖など、こうして取り除いてやればよい。これで欲望のままにも生きられよう」
松永は不死香炉を発動させた。
そうして、戦も次第に苛烈を極めていくのだった。
→(血の表現使用無)
→(血の表現使用有)