ドンッ

は思いっきり畳に拳を打ちつけた。

ここは、奥州、竜の住まう城。

「ちょっと信じられないんですけど!」

「Oh-随分とご立腹だな…」

の様子に上座に座るこの城の主、伊達政宗は苦笑いを零した。

例の戦からまだ2ヶ月しか経っていない。

が城に伊達を尋ねて来たと聞いて伊達は耳を疑った。

が、それは事実であり、こうして一室に招けばそわそわと最初、あたりのものを珍しげに見ていた。

どうしたんだと切り出せば、上の通りだ。

「また、ですよ、また人取橋!」

は、伊達に礼を言いに行きたいと思っていたのだが、北のほうへ行くという松永について行ったところ、人取橋に行くつもりだったことが発覚したのだ。

「まだ、傷が、状態が万全というわけでもないのに…」

はぁとが溜息を吐くと、片倉がお茶をにさし出す。

「わかるな…全く少しは自重していただきたいものですな」

チラリと片倉は伊達を見る。

「HA!」

伊達は笑い飛ばす。

「おっさんと一緒にすんな」

「久秀様もそんなにおっさんじゃないですよ、ちょい悪オヤジです」

「ちょいどころか極悪じゃねぇか…」

反論するに伊達は呆れたように言う。

「いいんです。松永久秀良い人伝説作りますから」

「Hahn、それは面白そうだな…オレも作ってやろうか?」

「遠慮しておこう」

バンと言う音と共に松永が部屋に入ってきた。

「松永、テメェ…」

片倉が、刀に手をかけるが、伊達がそれを手で制する。

「早かったな」

「卿が文を飛ばす前にこちらに向かっていたのでね」

しれっと松永は言う。

「ああそうかい」

伊達もどうでもよさそうに言う。

だけは、松永の登場で少し蒼褪めていた。

(こっそり、こっそり抜け出したのに!)

「さて、」

松永がのほうを向く。

びくりとの肩が跳ねた。

その様子を興味深げに伊達は眺める。

「…帰るよ」

の手を取ると松永は伊達に背を向けた。

「世話をかけたね」

「別に構わねぇぜ?、いつでも来いよ」

「ぁ、はい。ありがとうございます、また」

「おう、またな」

松永に引き摺られながらは伊達に返事をし、伊達はそんな二人を愉快そうに見送った。

「久秀様っ歩けます、歩けますからっ」

城を出るときも奇異なものを見るような視線に晒され、街道に出て人が少なくなっても放されない手には抗議の声を上げる。

ぴたと松永が立ち止まる。

「…卿が、…帰ってしまったのかと…」

は目を見開く。

「大丈夫です、きっともう」

(私はどこにも行きません)

言葉にしなくてもきっと、松永には伝わった。

「卿が嫌だと泣き叫んでも、私が帰しやしないよ」

ニヤリと挑発めいた視線で松永はそれに答えた。

「ははっ臨むところです」

二人の影が日に照らされ、長く伸びていた。



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