前田家での宴会が終わった後、と三人衆は当然、前田家に泊まった。
朝、が顔を洗いに井戸に向かっていると、前田慶次がこっそりとしながらどこかに出て行こうとしていた。
「おはようございます、慶次さん」
は、前田の背中に向かって声をかけた。
「ぅおっ…お、おはよう」
前田は、思い切りびくりと肩を震わせ、声の主がでわかるとほっとして振り向いた。
「どこかに行かれるんですか?」
「あ、あーうん、そう、ちょっと朝の鍛錬で走りこみに…」
前田と肩に乗ってる夢吉は、頭をかきながら引き攣った笑みを浮かべる。
(目が泳いでるよ…)
「そうなんですか、お気をつけて」
にこりと手を振って送り出す。
「うん、ありがとなっ」
そう言って前田は飛ぶように走って出て行った。
は、ふ、と息を吐いて手を下ろした。
ぐりっ
それとほぼ同時に頭に衝撃を受ける。
そして降ってくる声。
「なんだ、風来坊行ったのか」
「弟…痛いんだけど」
旋毛に顎乗せてぐりぐりするのやめて
・・・・・・・・・・
「うりうり〜」
「痛い痛い!」
弟はニヤリとしたかと思うと、余計顎をの頭に押し付けた。
「何してんだ、お前等…」
兄が通りがかって、一生懸命弟の顎を離そうと奮闘しているとをからかって遊んでいる弟に声をかける。
「弟がー」
「がー」
「さっさと支度しろ」
「「はーい」」
三人で井戸を使って身支度を整えて、もう一人の弟を起こして顔を洗いに行かせている間に用意を終える。
「おぉ、いつも俺が起きると全てが終わっている…」
「いつも起きるの遅いからね」
ていうか、城にいるときはあんなに早起きなのになんで?
「俺達が起こしているからな」
「コツがいるんだ」
兄と弟がに説明をする。
「そうなんだ」
昨日宴会をした部屋に行くと、まつが丁度朝餉を持ってきた。
「皆様、おはようございます!よくお眠りになられましたでしょうか?」
「おはようございます、利家さん、まつさん。とてもよく眠れました、ありがとうございます」
「おぉ、それはよかった!某も良く眠るぞ」
前田利家が胸を張って答えた。
「世話になったな」
「いや、こちらこそ。慶次が迷惑をかけた、これからも仲良くしてやってほしい」
兄が前田に言うと、前田は、前半は真面目に、後半はにこりとして答えた。
「遠慮する」
「断固拒否」
それには弟達が真面目くさった表情の冗談で返した。
「そういえば、慶次がおりませぬ。犬千代様、慶次を見かけませんでしたか?」
「ん?某は見てないぞ」
「風来坊なら、どっかに行ったみたいだぞ」
「朝、走りこみだか鍛錬だかに行く、と」
まつの疑問に、弟とが答える。
「まあ!慶次ったら…逃げるとは、武士として許せませぬ!」
「まあまあ、まつ、先に飯にしよう!某腹が減った」
息巻くまつを前田が宥める。
「ああ、申し訳ありませぬ。さあ、たーんと召し上がってくださいまし」
そうして、前田家の美味しい朝ご飯を頂いて、更にお弁当を貰って、と三人衆は、前田家を後にした。
「美味しかったねー」
「兄の作る飯よりうまかったな」
「兄、精進しろ」
「なんでお前等にそこまで言われなければならないんだ!」
また、旅が再開された。
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