三人衆は、町をぶらぶらと散策していた。
「お、見ろ、本多忠勝うちわだ!」
「おぉカッコイイなぁ」
「お客さん達目の付け所がいいねぇこいつは、本多様が署名してくださった一品でね…」
「ほーぅさすがは地元だな」
弟達は土産屋の主人と本多忠勝品について色々と聞いている。
が、兄が一言。
「お前等、そうは言っても持って帰れないからな」
言われると思っていた言葉だから弟達は慌てない。
「兄、少しくらいならいいだろう?」
「そうだぞ、少しくらいなら大丈夫だろう」
弟達は、今度は兄を説得にかかる。
実は欲しいと思っている兄だからそんなに説得に時間はかからない。
すぐに、
「小物一品だけだぞ」
と許可が下りた。
「どれにするかなぁ」
「ここはじっくりと選ばねばな」
「ああ、それでいて旅の邪魔にならないものでなければ」
兄まで品物をじっくりと見る態勢になっていった。
兄が、本多忠勝銅像(約一寸)を手に取った時どこかで見たことのあるような風体の男が茶屋にいるのを見つけた。
兄は、その銅像を元の位置に戻すとその茶屋へと足を運んだ。
「徳川殿ではござらぬか。このようなところで如何いたした?」
小豆餅を頬張っていた徳川は、行き成り声をかけられて咽た。
「ゴ、ゴホゴッホ…なんだぁおめぇらどっかで会ったか?」
徳川は急いでお茶を飲み干してマジマジと兄を見て首をかしげる。
「ああ、三好三人衆と言えばおわかりだろうか」
兄が素直に言うと、徳川は更に驚く。
「なんだって、そんな…もしやおめぇらが最近の誘拐事件の犯人じゃあるまいな!」
徳川は、兄に掴みかからんばかりに声を上げる。
その不穏な内容に兄は心底驚愕する。
「なっそのような事件が起きているのですか?我々はつい昨日こちらに立ち寄ったばかりで…」
「そうだったのか、いやすまねぇ。ああ、座ったらどうだ?長い話になる、できればおめぇらにも協力してもらいたいくらいだ」
「かたじけない」
兄が徳川の隣に腰掛けると、弟達も店から出てきた。
「お、…あーー本多忠勝ではないか!」
「おぉぉぉ本物だ!」
が、弟達は茶屋の隣にいた本多に目が釘付けになったようだ。
「お、おいお前等…すまない、徳川殿」
わらわらと本多に群がる弟達に兄が徳川に謝る。
「なに、気にするこたぁねぇ。忠勝!じっとしていてやれよ」
シュー
それに徳川は盛大に笑って忠勝に指示をした。
「それで、誘拐事件ですか」
「ああ、ここのところ約一月ほどで若い娘ばかりが何人も忽然と行方が知れなくなったらしい」
苦々しい表情で徳川はお茶を啜る。
「それはまた…犯人は捕まったのですか?」
「いや、これがまた手際のいい奴等でな…ワシ自ら調査に乗り出したってわけよ」
「なるほど…それは集団の可能性が高いですな、野盗やこの辺りだと山賊、ですか」
「そうだ。だが、これがなかなか尻尾を出さねぇ」
「裏で糸を引いてる人間がいそうですな」
兄の言葉に徳川も大きく頷く。
「その通りよ、ワシが見るところ路暮渡って宿が怪しい。そこに宿泊したりそこの近くの娘ばかりがいなくなっているようだ」
徳川の言う宿名に兄は聞き覚えがあった。
頭の端で徳川と兄の話を聞いていた弟達が声を上げた。
「「だ!」」
「しまった、あいつは今一人だ」
三人衆は大慌てで宿、路暮渡に向かった。
「お、おいおめぇら一体…忠勝!機動形態だ、追うぞ!!」
シュキューン
三人衆が走り去ってしまった後を徳川も本多に乗って追いかけた。
三人衆が宿に着き、部屋の襖を開けると、そこは見事に蛻の殻だった。
「掛け布団ごといなくなっている…!」
「、無事でいてくれ」
「ック、…」
三人衆は呆然として、膝から崩れ落ちた。
本多を外にとめて宿の中に上がってきた徳川が悔しそうに言う。
「おめぇら娘と一緒だったのか…悪かった、もっと早く言ってりゃ」
「ああああ、松永様に殺されるぅぅぅぅ」
「減給どころでは済まされないぞ今回はぁぁぁぁ」
「終わったぁぁぁ全てが終わったぁぁぁぁぁ」
徳川が言い切る前に三人衆はバタバタとその場で頭を抱えて転がりだした。
今日が落日だぁぁぁぁ
「お、おい!落ち着け!まだ死んだわけじゃねぇだろうが!!娘は大抵一箇所に集められて売り飛ばされるが定石だ!まだ希望はある、諦めるんじゃねぇ!!」
わあわあ言っている三人衆に徳川が喝を入れた。
「う、うう、徳川殿…」
「大丈夫だ、これではっきりした。おい、宿の連中全員ここに連れて来い!忠勝」
よしよしと兄の肩を叩いて徳川は外の忠勝を呼んだ。
その頃、茶屋のお婆さんは忽然と消えた客に悔しそうに叫んだ。
「く、食い逃げだよぉぉぉぉ!」
→