暗い森の中を長曾我部親衛隊の人に連れられて歩く。
「足元、気をつけろよ」
「大丈夫か?」
前を行く二人があの男達を縛り上げて歩かせ、その後ろをともう一人の親衛隊の人とついて行く。
「心配いらないからよ、アニキはよ、すっげぇ人だから」
「そうなんですか」
と一緒に歩く人はが怖がらないように色々と話をしてくれる。
「この前俺らこーーーーんなでっけぇカジキを釣ってよー」
話ながら前の二人に相槌を求め、彼等もうんうんと大きく頷く。
「それは凄いですねー」
「カジキって見たことあるか?」
「んー切って分けられたのなら見たことがあります」
「生きてるのはよ、暴れ馬みてぇなもんなんだぜ」
自慢げに腕に力瘤を作ってに見せる。
そしてその瘤を叩いて言う。
「ここの見せ所ってやつよ」
「なるほどー」
一生懸命話しかけてくれるからも大分緊張が解れてきた。
「お、見えたぜ」
前を歩いていた人が指を差す。
「アニキーー!」
ぶんぶんと腕を振っての横にいた人が走り出す。
その人が走って行った先には、横になった丸太に腰を掛け、片足を切り株に乗せて何かの紙を見ている長曾我部がいた。
そして、その人が長曾我部に向かって何事かを言うと、長曾我部がこちらを振り返った。
と目が合うと、長曾我部の左目が大きく見開かれた。
「じゃねぇか!」
走り寄ってきて肩を掴まれる。
「わっ」
「おい、大丈夫か?怪我とかしてねぇか?…野郎共、よくやった!」
ガクガクと揺らされながらは頷くと、長曾我部はほっとしたように笑んで、の後ろで男達を抑えている部下に言った。
「へ、へい!あ、俺らこいつ等をちょっとやってきやす!」
男達を引っつかんで彼等はどっかに行ってしまった。
「ー、ゲンキー!サイカイーウレシイー」
ぱたぱたと鳥が飛んできての肩に乗って囀った。
「私のこと覚えていたんだ。私も嬉しいよ」
は嬉しそうに鳥を撫ぜた。
「何にしても無事でよかったぜ。どうした、また迷子か?」
(リクエスト:迷子は迷子を呼ぶ参照)
「いえ、違います。宿で休んでいたらあの人達に連れ去れたようで…」
「あぁん?なるほどな…でもなんでお前こんなとこにいんだ?」
ふ、と長曾我部は腕を組んでを見る。
「えぇっと、私、ちょっと知り合いを訪ねて小田原まで行く途中だったんです」
「そっか…一人でか?」
「いいえ、他に三人と一緒だったのですが。恐らく私をゆっくり休ませるために部屋にはいなかったのだと思います」
そうだ、三人衆がその場にいたのならはここにはいない。
「ったく…悪党ってのはほんとどうしようもねぇな」
長曾我部は頭をわしゃわしゃと掻いて言う。
(…久秀様もどちらかというと悪党、だよなぁ…うん、どうしようもないな、うん)
ちょっと、松永のことを思い出して沈みかけただが、思い出したことで平静も取り戻した。
「あ、あの、元親さん…あ、えっと長曾我部様、「待った」…はい」
が長曾我部様と言ったところで長曾我部がの前に手を出して止めた。
「言ってなかった俺も悪かったけどよ、その様付けいらねぇから。前ん時と一緒でいいから、な」
「はい、元親さん」
「おう、何だ?」
にこりとしてが長曾我部を呼ぶと長曾我部もニカッと笑って答えた。
「あの「アニキー!大変なことがわかりやしたぜ!」…だそうです」
の言葉に被せて長曾我部の部下が大声で言いながら駆け寄ってきた。
「なんだぁ?おめぇら、ちったぁ落ち着け!」
はぁはぁと息を弾ませる部下に長曾我部は怒鳴る。
「へい、すんません。…アニキ、さっきの奴等ここらへんの女どもを売り捌くつもりだったようで、それが今日の夕刻だそうです!」
「って、ことは私以外にもいっぱい囚われている人がいるってことですよね」
が呟くと、部下は大きく頷く。
「なんでも徳川に見つかりそうだから早めたそうですぜ。アニキ、どうしやしょう」
長曾我部は舌打ちすると、顔を引き締めて他に色々なことをやっている野郎共に向かって叫んだ。
「野郎共!ちょっくら人助けに行くぞーーーー!!!」
「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉアニキーーーー!!」」」」」」」
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