徳川領もあと少し、武田領との国境が近づいてきた。

「あと少しだなぁー」

「武田かーあっついなー」

三好弟達が、本多忠勝うちわを扇ぎながらだらだらと歩く。

「お前等、そうだらだら歩くな。そして武田に入ったら団扇はしまえよ」

「「はーい、オカン」」

三好兄の注意に、弟達はだらだらとやる気のない返事を返した。

それに兄がガミガミと説教を始めても弟達は何処吹く風。

「…お〜ま〜え〜ら〜」

兄が低い声で凄んでも、

「あー、なんか喉渇かないか?」

「ん、そういえばそうだな…、休憩したいだろう」

弟達は普通に無視する。

「あー、うん、そうだね。っていうかちょっとは反省したほうがいいと思うよ弟達」

は、怒り心頭な兄の矛先が自分に向かないように、弟達に注意しつつ答えた。

弟達は互いに顔を見合わせると、首を傾げての方を振り向いた。

「「何に?」」

そして、今までで一番澄んだ瞳で弟達は言った。

兄の雷が落ちるまで後…一、二、三

「お前等ぁぁぁぁぁぁぁ」

が両手で耳を塞いだその瞬間、兄の怒声が徳川と武田の国境近くに響き渡った。


「耳がキンキンする、足が痛い…」

はお団子を食べながら遠くを見て呟いた。

「あー茶がうまいなー」

「ああ、全くだ。茶がうまい」

弟達はその呟きを聞こえない振りで只管お茶を啜る。

ゴン ゴン

「「イデッ…悪かったって」」

兄の拳骨が二人に落ちて、頭を押さえつつ、弟達はに謝る。

あの後、凄い奇異な目で見られ、急いでその場を離れたのだった。

「まぁいいけど…早く進んだから」

予定よりも早く宿場に着いたし、こうやって茶屋で一服ができる。

弟達にやっていた視線を戻すと、その視線の先には美しい忍がいた。

…かすがさん。お久しぶりです」

思わず噴出しかけた団子を押し込んでは頑張って言った。

「ああ、松永に聞いたときには驚いたが。、お前本当にこんなところまで来ていたのか」

「あ、ええ、まぁ…色々とありまして。あ、怪我はもう大丈夫みたいですね」

(リクエスト:月の綺麗な夜に参照)

「当たり前だ。私は忍、お前とは違う」

一瞬だけ、かすがは羨望のような視線をに向け、すぐさま平時の視線に戻す。

「で、何の用だ?上杉の忍」

「松永様に聞いたというなら、うちに潜り込んだのだろうが」

「それよりもここは敵領だぞ。そんな真昼間に堂々と出てきて…」

三人衆が口々とかすがに言うが、かすがはそれは見事に聞き流してに言う。

「お前、文は出さないのか」

「え?えーっと…誰に、ですか?」

かすがはの返事に思い切り顔を歪ませて溜息を吐く。

「待っているそうだぞ…せめて自身の言葉で安否くらいは伝えてやれ」

かすがの言葉には目を瞬かせる。

(まさか…久秀様?)

「ち、ちなみに私は今度から謙信様に報告書以外にも文を出そうと思う」

、ああ、そう、なんですか。いいですね、そういうの」

頬を赤らめて、さっきとはまるで雰囲気の違うかすがに戸惑いつつ、は言葉を返す。

「これでもっとあの方との距離が縮まれば…ああっ

更に恍惚とするかすがには、どうしようか真剣に迷った。

「ということだから、私は謙信様の元に帰る。じゃあな」

が迷っている間にかすがは自己完結してその場から消えた。

「え、えーーっと、お気をつけてー!

とりあえず、はもうどこにいるかわからないかすがに向かって叫んでおいた。