真田と三好三人衆の手合わせを見ていたときに武田に言われた言葉があった。
「そなた、迷い子の目をしておるな」
「え…」
うぉぉぉぉぉ燃えるぅぁぁ
鋭く、素早く、終わらせるっ
戸惑うに、武田は真田と三人衆の手合わせの様子から目を離さずに言葉を続けた。
「何に迷うておるかはワシにはわからぬ。が、そなたの旅はその答えを見つけるためのものでもあるのじゃろう?」
ある種確信めいた問いに、は迷いながらも頷く。
闘魂、絶唱ーーー!
やれやれ…
仕方ない…
「まだ、私の中で確固としてそうだと言える自信はありませんが。きっと、」
も手合わせの様子を見ながら答えた。
「迷いを捨てることは重要じゃ。迷いは弱さを生む。されど、迷いは決して悪いことではない。迷いを持つことが重要なこともある」
武田の言葉には真摯に耳を傾ける。
ゆけ、わが槍!力の限りっ
鋭く、素早く、静穏に
「迷うことで得られるものもある、ということですか?」
武田はの言葉にふ、と笑みを溢してを見て言う。
「さて、その答えもすでにそなたの中にあるじゃろう」
余りにも常識的なことを言ってしまっただろうかとは少し反省したが、武田の言葉は少なからずに考えるということをさせるきっかけとなった。
その後、猿飛が「夕餉ですよー」と呼んで、武田と真田の殴り合いが始まって、三人衆が疲れたと口々に言って、それどころではなくなってしまった。
さらに食事中は、真田と猿飛のやり取りや、三好兄と弟達のやり取りに気を取られてしまった。
しかし、夜、布団に入って目を閉じれば、先の武田との会話がの頭の中をぐるぐる巡る。
(迷い、何かと何かを天秤にかけている…考えたくない…けど、考えないと、きっといけない)
はやるせなくなって、体を起こした。
横には三人衆が寝ている。
(たぶん、誰かは起きているだろうし、上にはきっと佐助さんがいるんだろう)
夜気にあてられないように上着を羽織って、外に出る。
縁側に座って、空を見上げる。
今でこそ見慣れた星が降ってきそうな空。
月明かりと星明りで十分なほどに明るい。
かつての夜空と大違いで、その違いが、その違いを感じるほどに、の考えを渦巻かせる。
心臓の音がどきどきと煩く聞こえる。
目を閉じれば、今までのことが駆け巡り、こちらとあちらとを思考が行ったり来たりする。
(どちらも大切で、どちらも選べない…けど、どちらかを選ばないと、いけない、の、)
か、という疑問は、飲み込まれる。
もどかしい。
はっきりしない気持ちと思考と常識と、を抱えて、は苦悩、する。
もうどうしようもなくて、重く息を吐き出した。
思わず、ここにいたらと思った人に自分自身で自分に呆れる。
(久秀様が常に答えをくれるはずがないのに)
大体、そういう場合大抵ははぐらかされるか、馬鹿にされるか、爆破されるか、えっと、それから…
考えて、気持ち悪くなって、は考えるのをやめた。
(今はそういうことの話じゃなくて…)
軽く頭を振って、落ち着かせる。
(ここにお茶があったらいいのに…)
呼んだら届けてくれそうな気もしたが、なんとなく、今は一人でいたい気がしては天井を見上げたけれど、視線を庭へと移した。
(ん、あれは…)
視線を動かしたら視界に何やら茶色いものが映りこんだ。
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