…さまー…むるぁ…ぅお、さ…ま…ゆ…るぁ…

鳥の鳴き声よりも何やら野太い声の響きにの意識は緩やかに浮上する。

「うるせぇなアイツ等」

が起きてしまうな、これでは」

三好弟と兄の声も聞こえる。

ゆっくりと瞼を押し開ける。

の目に映ったのは見慣れぬ天井。

(ああ、そうか、ここは…武田躑躅ヶ崎館、)

「起きたか?」

「おはよう

布団の上に胡坐をかいていた二人がを覗き込んだ。

も体を起こして二人に向き合う。

「ん、おはよう…」

目元を擦って意識をはっきりさせれば聞こえてきた声が何事か理解する。

「殴り合い…」

「ごめんねー、起こしちゃったでしょ」

声のほうを向いて呟くと天井から猿飛が逆さまに出てきた。

天井に足を引っ掛けてぶら下がっている。

「猿飛、煩いぞあれ」

「朝早くから迷惑だ」

「ごめんってアレほんと日課だからさ…」

弟と兄の文句に疲れた顔をしながら猿飛は答えた。

「おはようございます、佐助さん」

「うん、おはよう。よく眠れた?」

猿飛の質問には、兄と弟が答える。

「眠れるわけがない」

「枕が固いぞ」

「…別に旦那達には聞いてないんだけど」

半眼で兄と弟を睨む猿飛に、は困ったように笑いながら言う。

「よく眠れましたよ。ところで兄、もう一人は?」

「あいつならまだそこで寝てるぞ」

「仕方ない、起こすか」

兄が指差した方にある布団は盛り上がっていた。

「…まだ寝れてるんだ」

それを見た猿飛は意外そうに呟いた。

「ええ、いつも起きるの遅いんです」

「へぇ、あ、そうそう井戸はそこの右でて左行った奥のところにあるから」

手拭いとかはこれ使って

猿飛は思い出したようにそう言うと、に桶と手拭いを渡す。

「ありがとうございま、

ドガンッ

…す」

が受け取った時、真田が襖を壊しながらのいる部屋の壁に激突した。

「うわぁ旦那大丈夫?」

「真田様、大丈夫ですか?」

真田はのびているようだ。

唸り声が少し聞こえる。

「ぐあ、あーよく寝た…ん?

その真田の起こした音でようやく最後まで寝ていた弟も起きたようだ。

「何事だ?」

「真田が吹っ飛んできた」

寝ぼけ眼で尋ねる弟にもう一人の弟が簡潔に説明し、

、危ないからこっちに来なさい」

「あ、うん」

兄はに手招きをして呼んだ。

「旦那は俺様が運んどくから、ちゃん達は顔でも洗ってきちゃって」

猿飛は天井から降り立って真田の腕を掴んで言う。

「ああ、では」

「片付けも」

「頼む」

「よろしくお願いします、佐助さん」

三人衆とはここぞとばかりに猿飛に畳み掛ける。

、片付けまでって…、…ま、任せとけっ

猿飛は一瞬違うだろうと言いたかったけれどもう背を向けている四人に多くは言えず、結局片付けまで請け負うことになった。

っまた時間外労働なんですけどぉぉぉぉ!

猿飛の心の悲鳴が躑躅ヶ崎館に響き渡った。