猿飛特製朝ご飯を武田、真田、猿飛、三人衆と一緒に食べる。
「猿飛、ご飯おかわり」
「あ、俺も」
「はいはい」
三好弟達から茶碗を受け取って櫃のご飯をよそう猿飛は、まるで母親のようだ。
「佐助!某もだっ」
「あーはいはい順番だからね旦那。待て」
「うむっ」
はうっかり真田の頭に犬の耳が見え、背後には尻尾が見えた。
(ぱたぱたしてる、ぱたぱた)
「よ、昨夜はよく休めれたか?」
武田に声をかけられて真田と猿飛に向けていた視線を武田に移す。
「はい。おかげさまでゆっくりと休むことができました。ありがとうございます」
「なに、随分とすっきりとした顔をしておるようじゃから疑いはせんかったわ」
はっはっはと豪快に笑う武田に、は色々と見透かされたようで視線を下げた。
(なんで皆エスパー…)
「それで信玄公。頼みがあるのだが」
の横に座っていた三好兄が武田に言う。
武田は、ふ、と口元を緩めた。
「そなたらが武田を通る間の安全は保障しようぞ。武田の領内までじゃが、この幸村と佐助を使わそう」
前半は兄の望むものだったが、後半の言葉は意外なものであり、一瞬全員の動きが止まった。
そして次の瞬間
「え」
「「「は?」」」
と三人衆は思わずぽかーんとしてしまったし、
「え、ちょ聞いてないんですけど大将」
猿飛は慌てるし、
「わかりましたお館様!この幸村必ずやお役目を果たしてみせますぞぉぉぉぉ!」
真田は吼えた。
「うむ、幸村ぁ!」
「お館様ぁ!」
「はい、今食事中ですからお二人とも席に戻ってくださいね。それから大将、その話はいつ決まったんですか?」
うっかり殴り合いが始まりそうになるのを猿飛が止める。
「うむ。今じゃ」
猿飛の質問に武田が威厳たっぷりに答えた。
「さすが、お館様でござる」
真田は感服といった風に言うが、
「旦那、ご飯は飲み込んでから喋ってください」
猿飛に厳しく注意されたように口の中にご飯が詰め込まれていた。
「信玄公、実にありがたい申し出とは思うがそれは聊か困る」
「何故じゃ」
ぴしりと背筋を正した兄は口を開く。
「旅がこれ以上大人数になれば移動の速度も落ちよう。さらに言わせれば宿も取りづらくなる。大体それまでの間の食費や宿泊費が複雑になると予想される。それに、そこまでしていただかずとも我等は武田を安全に抜けることができる」
(さらにつけたすと色々と真田様は目立つお方だからなぁ)
あんまり目立っていいようなことではない旅だ。
…諸国の大名に何故か知られてはいるが。
それは、大名等の諜報機関の素晴らしさであり、特に隠していることでもないからだ。
だからと言ってむやみやたらに目立っていいものではない。
「うむ、わかっておる。じゃからこれはワシからの頼みでもある。無論、武田領内での食費宿泊費等は全額佐助が受け持つ。、すまんが少し頼まれてくれんか?」
「某からもお頼み申す!」
「あのー、俺様なんか一瞬耳が可笑しくなったんですけどー、大将ー?」
その場の全て(猿飛以外)の視線がに集中する。
「えぇと、その、急ぐ旅、ではないので、もし、あの、佐助さんがよろしかったら…」
(武田の総大将に頭下げられて否もないでしょう…)
三好三人衆は頭の中で予算がいくら浮くか計算しているようだ。
「大将、あの、俺様…」
「異論はないな?佐助」
「佐助が異論など持ち得るはずがございませぬ、お館様」
「…ありませーん」
(佐助さん、ご愁傷様です…)
は心の底からそう思った。
こうして、三好三人衆との旅に真田と猿飛が加わり暫し六人で移動することとなった。
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