がらがら、と荷車を引いた人達と行き交う細い街道。
広い街道が通行できない今、この道を使う人が多いようだ。
「佐助、あちらの街道の整備はどうなっておる」
「ん、ああ、さっき見てきましたけど、調査してましたよ。帰る頃には通れるでしょ」
そうか、と頷く真田の顔は普段の顔とは違っていた。
(やはり真田様も人を治める立場に在られる方なんだなぁ…)
人と人、として付き合っているとそういうことをたまに忘れてしまいそうになるが、彼も三好三人衆も一武将であり、猿飛は一忍だ。
(大丈夫、なんだろうかこの戦国は)
ふらふらと出歩く武将格が多すぎるような気がする。
(うーんまぁ、それはそれで平和で素敵だけれども…)
誰も彼もが生き残れるほど甘い時代ではない。
こう親しくしていてもいつかは…なんてこともありうる。
「、どうかしたか?」
「猿飛が気持ち悪かったのだろう。わかるぞ」
「わかるわかる」
「何ソレ弟君達酷くない!」
「確かに佐助にはいたらない所が多々あるであろうが、殿、どうかご容赦くだされ」
「旦那!?」
云々意識をすっ飛ばしていたから、三好兄が注意を引いてくれた。
それに便乗して、三好弟達がふざけだす。
更にはそれに真田まで乗っかった。
「ちゃん!そんなことないよね!俺様気持ち悪くなんかないよね!」
縋るような眼差しで猿飛がに言う。
(この場合は、いいえと言うべきかはいと言うべきか…迷うな)
どっちで答えたほうが面白いだろうか、などと無駄なことを考えて言葉を濁していると、猿飛が勝手に自己完結しだす。
「…いいよ、いいよ、どーせ俺様なんて、いいんだよー」
いじけだした猿飛には慌てて声をかける。
「そんなことないですよ。佐助さんはかっこいいですって」
「…ほんと?」
「「「嘘(だぞ)」」」
弟達と真田はまだふざけている。
「ちょ、弟達、真田様も。佐助さんほんとですよ、本当です」
「そっか、うん、ありがとね、ちゃん」
「いえいえ…それよりも兄、いつまで笑ってんの?」
弟達と真田はつまらなそうにして終わったが、兄は弟達が猿飛について言った時から噴出して笑い続けていた。
「…あー、笑った笑った。すまんな猿飛」
「いいけど。三好の旦那に笑われたくなかったなー」
ようやく笑いの発作が治まった兄が猿飛に言うが、猿飛は半眼でそれを受けた。
弟達が猿飛の台詞を聞いてにやっと笑んだ。
それを見て、また弟達が何かを言う前に、とは先に口を出した。
「あ、あの向こうに見えるのが森?」
「そのようだな」
「そうだよ」
「まさか獣道、などということは」
「ないだろうな?」
「旧街道として使っていたのでそのようなことはないでござろう」
弟達が嫌な予想を真田に問うが、真田はきっぱりと言い切った。
「今日はもう森に入るのは危ない」
「手前の宿場で休んでから明日にしよっか」
「そうですね」
オカンと化した兄と猿飛が真剣に話すのにも同意した。
「今日の食後の甘味が楽しみでござる」
「俺の分もやるよ真田」
「俺のも」
「おぉっ弟殿!ありがたく頂戴いたす」
真田の言葉にげんなりとした弟達とは反対に真田は上機嫌で、宿場町へと入っていった。
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