上を見ても、下を見ても、横を見ても、緑緑緑…

鬱蒼と茂る森は差し込む日の光も少ない。

なんとなく心細く感じる上に、人もいない。

往来が多いかと思いきやそこまでこの道を使う人はいないようで、まわりを見渡してもと三好三人衆と真田主従しか見当たらないのだ。

ざっざと五人が歩く足音しか聞こえない。

たまに鳥の鳴き声や梢が揺れる音が聞こえる。

「なぁんか変な感じだねぇ」

「…そうだな、抜けられればいいが無事に」

猿飛と三好兄が辺りを警戒しながら呟いた。

それが聞こえて、の心に不安が広がる。

「え、な、なんかある?なんかでる?」

「あー大丈夫大丈夫」

「そうだぞ

「俺達がいるからな」

「心配無用でござる!」

の言葉に力強く猿飛と弟達と真田が答えるが、

「あ、妖が出ることはないだろうしな」

「兄、声が震えてる…」

「う、大丈夫だ!!

兄はお札を握り締めて、空元気で答えた。

「兄、何故札なんか持っているんだ?」

「まさかずっと持ってたとかないだろうな?」

「三好の旦那って意外と怖がりなんだねぇ」

「誰しも苦手なものの一つや二つはあろう」

「う、うるさいうるさい!」

冷たい視線を振り切るように兄が前に出て振り返り、大きく腕を振る。

その瞬間、真田と猿飛が兄の後ろに武器を振り下ろした。

弟達はの傍に寄り、武器を構える。

一気に緊迫した空気に変わる。

何が起こったのかとまわりと見渡せばいかにも柄の悪い連中が達を囲んでいた。

「ま、ある意味お約束ですね」

、離れるなよ」

「ん」

猿飛が笑みを浮かべて言い、札をしまった兄がに言う。

旦那、名乗りを上げるのは勘弁してくださいね

わかっておる

猿飛がついでとばかりに真田に小声で頼んだ。

北条との国境が近い。

真田はただの武将ではなく、武田の虎の若子といわれる猛将だ。

そんな武将が国境付近にいることがわかったら北条から何をされるかわかったものではない。

「そなたら、何用か?我々は先を急ぐ故道をあけて欲しいのだが」

真田が頭目らしき男(図体がでかくてついでに言うと態度もでかそう)を睨みつけて言う。

「用は金目の物を置いていってくれりゃすぐに終わる」

男は口端をあげて、品のない笑みを浮かべた。

「拒めば?」

「あんたらをばらばらにして売り飛ばすさ。ああ、そこの女は適当に遊んでからだけどなぁ」

気持ち悪い視線がに投げかけられる。

そんなことにはならないとわかっていても、ぎゅうと兄の服の裾を掴むことは止められない。

「下衆が」

弟が低く吐き捨てるように呟いた。

「まぁ…人のこと言えないがなぁ」

もう一人の弟が困ったように弟の呟きに答えていた。

もその弟の言葉に、よくよく考えればそうだなと思って少し気持ちが軽くなった。

真田がそんな達の様子を見て、余裕の笑みを浮かべる。

「では、どちらも遠慮するとしよう」

「そーゆーことで」

「どっからでもかかって来い」

真田の言葉を猿飛と兄が引き継いだ。