「やっちまえぇ!」
どこかで聞いたことのある台詞で、一斉に周りの男達が飛びかかってきた。
金属と金属がぶつかる音、肉と肉がぶつかる音、怒声罵声悲鳴が鬱蒼とした森に響き渡っていく。
「うらぁ」
「よっと…ごめんよ」
猿飛は軽やかな身のこなしで相手の拳や脚を避けて的確に急所に手刀を打ち込んでいく。
ぶんっと弟に投げられた人が三好兄のほうに向かっていく。
「うぉぁっ…あっぶないな!」
「ああすまん兄」
「わざとだろうそれわざとだろう!」
「言いがかりもいいところだ」
を後ろに抱えながら、兄は避けて弟に怒鳴る。
弟はどこ吹く風で次のを相手していた。
「これでは修行にもならないでござるなぁ…」
真田は軽く相手をしながら呟く。
「んだと、ぅぐっ」
それを聞いた男が真田に殴りかかるが、あっさりと腹に蹴りを入れられてしまう。
「ひゅーやるねぇ旦那」
「余所見をするな佐助」
「へいへいっとぉ」
真田のほうを向いた猿飛の隙を見て攻撃しようとしていた男は猿飛に避けられて一撃入れられて吹っ飛ばされる。
「いただく、っぐ」
に狙いを定めた男が手を伸ばしても、すぐに弟が間に割り込み後方に投げ飛ばす。
目の前でくるくると状況が変わっていく、何もかもが速すぎて追いつかない。
ただは兄の背中に引っ付いて邪魔にならないようにすることしかできない。
これだけやられているのだからすぐに引けばいいものを、どれだけ根性があるのか、まだ頑張る賊の皆さん。
(凄いなぁ…頑張るなぁ…あ、血が…痛い痛い)
武器を構えていても真田や猿飛、三好三人衆は直接的には使わない。
使うまでもないか、それともに気を使っているのか、恐らく両方だろうが、そのお陰での視界に極度に痛々しい光景は入ってこない。
兄は武器を使って足元から砂煙を上げて相手を吹っ飛ばすため直接相手と組み合わないことも要因の一つかもしれない。
足元を見ると兄の技のせいで土が削れてしまっていた。
「兄、土が削れてきてるよ」
「ああ、そうだな、移動するか…おい援護を」
頼む、と兄が言う前に弟達が兄とを庇うように立ち位置を変える。
「無論」
「、大丈夫だな?」
視線を相手に向けたままの弟達から聞こえる声は頼もしい。
「うん」
は素直に頷いて兄と一緒に移動する。
真田のほうにちらりと視線を向ければ、静かに燃える瞳とかち合う。
(やっぱり闘うのは楽しいのかな)
真田は、と視線が合うと、どうしたらいいのかわからず、ただ微笑んでみた。
はその笑みがまるで大丈夫だ安心させるための笑みのようで、根拠のない自信を感じた。
小さく笑みを溢したに真田は安堵して早くこの場を片付けるべく拳に力を込めた。
それからすぐに、頭目らしき男が叫んだ。
「ち、引け、引くぞ」
すると、さぁぁっと波が引くようにまた森に静寂が戻ってきた。
「ふぅ…なんとかなったでござるな」
「ありゃここらに根を張ってる連中だね。今度討伐隊を派遣しましょうかね旦那」
「うむ、そうだな。あの街道が使えなくなった時に皆が困るでござる」
「も無事だし」
「金も取られてないし」
「よかったよかった」
安堵する三人衆にもよかったと言おうとしたけれど、懐の違和感に気がついて、さあという音が聞こえるくらい血の気が引いた。
(え、嘘、嘘でしょ、アレがない…!)
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