武田と北条の国境近くの茶屋にと三好三人衆、そして真田と猿飛はようやく辿り着いた。
これより先は国境の際にあたるため、真田と猿飛とはここでお別れだ。
「真田様、佐助さん、何から何まで本当にありがとうございました」
深々と二人に向かって頭を下げる。
「いやーどういたしまして!」
「うむ。なかなかよい旅であった。某も礼を言うぞ」
佐助
そう言うと真田は猿飛に何かを持ってこさせた。
「道中で食べてくだされ」
「さっきここの台所借りて作ったんだよ。はいどーぞ」
笹の葉に包まれたそれは、握り飯のようだ。
まだほのかに暖かい。
三人衆は手に取ると匂いを嗅いだり、細かく観察したり、三好兄の口に少し突っ込んだりしていた。
「…旦那達さぁ、もうちょっとさぁ、配慮とかしてくんないの」
溜息と共に猿飛から文句を言われると、兄が口の中に入れたまま何かを叫ぶ。
「もがもぶもぐ!」
「三好殿、安心して飲み込まれよ。某そのような卑怯な真似はいたさぬ」
冷静な真田の言葉に、弟達は兄に声をかけて背中を叩く。
「だってさ、兄」
「よかったな、兄」
「ごっふっ…おまえらぁぁ!!」
思い切り咽た兄が弟達を捕まえて説教を始める。
「大変失礼いたしました」
「なんの。この光景を見るのもこれで最後かと思うと感慨深いものでござるなぁ」
「そうだねぇ…あ、でもやっぱり嬉しいほうが多いな俺様」
やっと、やっと…俺様のお金が帰ってくる…!
嬉しいですと顔中に書かれているかのような猿飛の感極まった様子に、も真田も若干引き気味だ。
「…ごほん。某と佐助はこれでお館様の許に帰るでござる。どうか道中お気をつけて行かれよ」
「あ、はい。真田様と佐助さんもお気をつけて。信玄公によろしくお伝えください、本当に助かりましたと」
「うんうん任せて。真田の旦那が忘れてても俺様が覚えておくから」
「なにをっ佐助!某、そのようなことを忘れるようなものではないぞ!」
「えーこの間茶菓子自分で食べちゃったくせにどこにあるかと聞いてきたじゃないですか。俺様あの時どうしようかと思いましたよ」
「佐助ぇ!そ、そのことは内密にと…!」
「聞いてませんよ。旦那、いくらちょっと恥ずかしいことだからってそういう風に人の所為にしちゃいけない」
の両脇では、説教というか、言い合いというか、が白熱してきている。
こういう時は収まるまで放っておくのが一番と、はお茶を啜った。
半刻後
「終わりましたか?」
「「「「「終わった(りましたよ)」」」」」
まったりと休憩が終わった頃、両方の言い合いも終わった。
「真田、信玄公に礼を言っておいてくれ」
「うむ、しかと承知いたした」
「猿飛、帰ってくるといいな、金が」
「帰ってこなかったら可哀相だな、猿飛」
「不吉なこと言わないで」
弟達の言葉に耳を塞ぐ猿飛。
「武田軍は大きな軍なんだからそんなことないと思うよ」
「わからないぞ」
「読みが甘いかもしれないぞ」
「ほら、お前等行くぞ」
弟達がなおも猿飛を追い詰めようとするが、兄が二人の首根っこを掴む。
「では失礼」
「お世話になりました。ではまた」
「お元気で」
「じゃあね〜」
真田と猿飛に見送られて、と三人衆は北条の領内へと入っていった。
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