穏やかでなだらかな平野が広がる景色の中をと三好三人衆は小田原に向けて歩いている。
「今日は一段と富士山が綺麗だねぇ」
「そうだな」
「一富士二鷹三茄子」
「お、飛んでるぞ鷹が」
「あと茄子だけだね」
「おっとこんなところに茄子が」
「「「何故にある」」」
徐に三好兄が懐から茄子を取りだした。
「どっかから盗ってきたのか?また」
「手癖が悪いな。近寄るな」
「またとか言うな。これはなぁさっき道行く農民に貰ったんだ。まだ他にも色々と貰ったのだぞ」
弟達の台詞に心外だと、兄は弁解しながら懐からいろんな野菜を手品のように出してはしまう。
「物欲しそうな顔をしいたのだろう」
「痴れ者め」
「だから何故そうなるんだ」
ひたすらに困惑する兄を助けようと思わないでもないが、吹き抜ける風の心地よさと長閑な風景にそんなことはどうでもよくなる。
「…風が気持ちいいねぇ」
目を細めて遠くを見るに三人衆はぴたりと口を閉じた。
この先にこの長い旅の目的地がある。
ゴールを目の前にした高揚感というか、達成感というか、が綯い交ぜになった気持ちがする。
「会えるといいな、風魔に」
「うん」
は兄の言葉に素直に頷く。
ほんわかとした空気が流れるが、
「その前にまず小田原城に辿りつかないと」
「話にならんがなぁ」
弟達の言葉に一気に現実に戻された。
「そ、そゆこと言わないでよ」
むすっとして声をあげるが、弟達は真剣な顔で兄に言う。
「なんにせよ、あのうるさい赤いののお陰で」
「出費が抑えられたから、少しくらい贅沢してもいいだろう?兄」
籠を使うとか、土産を買うとか…
「駄目だ」
弟達の期待の篭った眼差しをふいと外して兄は即答した。
「えーー」
「ぶーぶー」
「いい大人がする態度じゃないぞお前ら」
すぐさまブーイングをする弟達に最早兄は溜息しかでない。
がこっそり三人衆から距離を取っていたのは言うまでもない。
(羞恥心ってないのかしら…)
青黄赤のマフラーでも首に巻いて踊ればいい。
…駄目だ、松永の入る場所がない
「っつぐっ」
「あんまり離れるなよ」
後ろから手を取られていきなり引っ張られ、がくっと仰け反ってしまう。
首の筋を擦りながら引っ張った張本人である弟を睨め付ける。
「そんなに強く引っ張らなくても」
「…痛かったか?すまん」
不満気に言えば、弟は驚いてを覗き込んで謝った。
「ほら、もうすぐ宿だから頑張れ」
「明日には小田原城も見えるだろう」
暢気にもう一人の弟と兄は言う。
「そっか…じゃあ今日の夕飯は豪華にしよう」
「お、いいなそれ」
「に賛成」
「え、ちょ、待て、それは…!」
ちょっとした意地悪のつもりのそれは、兄にとっては計算外だったようだ。
「兄、中身をしっかり確認しとけよ財布の」
「海も近いからうまいだろうなぁ海鮮とかも」
「いいねぇずっと山の幸ばっかりだったから海の幸も食べたいね」
「…はぁぁぁ今日だけだぞ」
すっかりその気のと弟達を止めることは不可能と兄は財布の中身を確認してから困ったように言った。
やったと素直に喜んで、弟達とは走り出した。
「あ、おい、待てお前ら」
一瞬、出遅れた兄が追いかければ、
「兄の分はなし、だ」
「早くしないと全部食べるぞ、が」
「ぇ、あ、うん、私が兄の分も食べちゃうよ」
前を行く三人は兄を振り返って笑う。
潮の香をする風がくるくると四人の周りを吹き抜けていった。
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