「…ん」
は、唐突に眠りから覚めた。
頭を起こすと、どうやらうつ伏せに寝ていたようだ。
寝ぼけ眼で辺りを見回すと、一気に眠気が吹き飛んだ。
(死屍累々…あれ、あの後、どうしたんだっけ…?)
辺りは、ばたばたと倒れて寝ている人ばかりで昨晩の宴のまま皆が寝てしまったようだ。
のすぐ横には兄が壁にもたれて首をこっくりこっくりしているし、弟達が丸くなって寝ていたりした。
長曾我部は、部屋の真ん中で大の字で寝ている。その頭には鳥もぐっすりと寝ていた。
徳川だけはたぶん部屋に戻ったのか戻されたのだろう。
徳川以外はほぼそのままの形で横になったり色々な格好で寝ていた。
昨日、徳川が宴会を開いて皆で飲めや食べやの大騒ぎになった。
はすぐには参加せず、湯を借りたり服を着替えたり(兄が新しいのを買っていた)してから参加した。
少しだけ、心を落ち着かせるような時間が欲しかったから。
自分がここに、生きて存在していることを頭で考えたかった。
ここにいる、ことは今から宴に参加すればわかる。
けど、心臓が動いているかどうか、誰もいないところで確かめてみたかった。
(私は生きて、そしてまだここにいる…)
それだけがわかって満足して、宴に参加した。
すでに始まっていた宴は、ちょっと引いてしまうくらい盛大だった。
長曾我部軍の人達や徳川軍の人達は意気投合したらしく楽しそうに酒を飲みながら語っていたし、長曾我部は部屋の真ん中で部下に言われるままに一気飲みなどパフォーマンスをしていた。
(どんちゃん騒ぎってこういうことを言うんだろうな…)
が部屋に入ると何故か一斉に視線を向けられた。
そして一斉に杯を掲げられた。
「の無事に、かんぱーい!」
「「「「かんぱーい」」」」
「あ、ありがとうございます…」
引き攣った笑みで礼を言って席に着く。
すぐに食べ物などが運ばれてきてどれも豪華で美味しくても時間を忘れて楽しんだ。
(…たぶん、そのまま寝てしまったんだ)
そうっと起こさないように弟達を跨いで襖を開ける。
開けたそのままでは思わず固まってしまった。
(見られてる…)
真正面に本多がいた。
無機質な視線には戸惑う。
「お、はようございます…」
が恐る恐る言うと、
シュキュイーン
光った。
は驚いてびくりと肩が跳ねた。
(えぇっと、これはどうしたら…)
今のを挨拶をしてくれたのだと考えることにしては、ちょっと聞いてみることにした。
「あの、顔を洗いたいのですが…どこに行ったらいいんでしょうか」
すると、本多はちょっと移動して、のほうを振り返った。
ついて来いということらしい。
は、慌てて小走りでついて行った。
本多はが顔を洗っている間も傍にいてくれて、部屋までちゃんと送ってくれた。
(見張り、なのかもしれないけれど…)
がふと本多を見上げると本多の頭に栗鼠がいた。
なんだかそれだけで雰囲気が軽くなったようで、は嬉しくなった。
人懐っこい栗鼠は、の手にも乗ったりして本多とにこにこしながら部屋に戻った。
部屋に戻ると三人衆に煩く羨ましがられたが、徳川がまた怒鳴って止めた。
「全く、おめぇらは最後まで忠勝忠勝と…殿、どうか道中お気をつけて」
「ありがとうございました、家康公、それから本多様も」
シュキューン
「はっは、よかったな忠勝!三人衆、しっかりな」
「はっ色々とご迷惑をお掛けしました」
「長曾我部にもよろしく伝えておいてください」
「馳走になりました」
「おうよ、起きたら言っておく。元気でな」
寝ている長曾我部を置いて、一足先にと三人衆は徳川の城を後にした。
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